大手企業からの“Webマーケティング調査”依頼
ある日、大手企業から「競合・ライバルサイトの調査をお願いしたい」という依頼を受けました。
対象となったのは、月間10万以上のアクセスを持つメーカー系のコーポレートサイト。対してライバル企業のサイトは当社が調査した結果、20万超えのアクセスがあり、明確な差がついていることを懸念している様子でした。
検索上位にあったのは「エラーコード」だった
検索経由で流入しているキーワードを分析したところ、依頼主の企業サイトでは、製品に関するトラブル対応、特に「エラーコード」での検索が非常に多いことが分かりました。
「製品名 エラー101」「型番A 故障」など、実際に使っていて困ったときの検索が目立っており、ページ構成もトラブルシュート中心に整理されていました。
この結果に、依頼主のご担当者は驚きを隠せず、「うちは、そういうページが一切なかった…」とショックを受けていたのが印象的でした。あと、面白い検索で、お客様の会社名とライバル会社名を同時に入力したものが流入していたり・・・ こんな検索をしているんだなぁと思いました。
大手サイトに見られた“惜しい導線”
分析を進める中で、ユーザーが必要な情報にたどり着くまでに、複数のクリックや階層遷移が必要なことも見えてきました。
例えば、製品のサポート情報を見つけるには、まずトップページ → サポートカテゴリ → 製品選択 → 型番入力…といった流れを強いられるケースが多く、時間がかかります。
これではユーザーが途中で離脱してしまう可能性もあり、検索エンジン経由のアクセスに頼らざるを得ない構造です。
AIチャットで補完できる可能性
こうした「情報到達までの距離」を縮める手段として、AIチャットの導入は非常に有効です。
ユーザーが「動かない」「エラーが出てる」と入力すれば、すぐに解決ページへ誘導する。あるいはそのままチャット上で簡潔な対処法を返す。
そういった運用ができていれば、カスタマー対応のコスト削減だけでなく、ユーザー満足度にも大きく貢献できる可能性があります。
では、なぜ大手サイトのAIチャットは“答えない”のか?
実際に大手企業のチャットボットを見ると、質問に対してすぐ答えず「○○のページをご覧ください」と返すケースが多く見られます。
その背景には、月間数十万アクセスを抱える大規模サイトにおいて、チャットAIの利用が「コストの壁」にぶつかっている可能性があります。
生成AIが1回の応答に使う“トークン”の量は意外に大きく、何千、何万という会話が発生すると、API利用料も高額に跳ね上がります。
そのため、あえて短文でリンク誘導する形式に絞っていると推測できます。
「それならGoogle検索でよくない?」という疑問
たしかにチャットに質問したのにリンクしか返ってこないのなら、「最初からGoogle検索した方が早い」と感じてしまうユーザーも多いはずです。
せっかくチャットUIにしても、実質“ナビゲーションボット”止まりでは本来の価値を発揮できません。
AIチャットは、ただのFAQ検索ではなく「ユーザーと向き合う対話体験」であるべきだと、今回の調査を通じて改めて感じました。
▶ 第6回:「問い合わせチャットで本当に求められるものとは?」