第6回 採用チャット|問い合わせチャットで本当に求められるものとは?

「すぐに答えてくれる」ことの価値

問い合わせチャットに求められるものは何か。
私が開発を始めた当初から意識していたのは、「ユーザーが質問したとき、すぐに・正確に・的確に答えが返ってくる」体験です。
これは見た目のデザインよりも、AIのキャラよりも、まず最初にクリアすべき基本的な機能だと考えました。

Embedding + 生成AIの分業が鍵

そこで採用したのが、OpenAIの Embedding Model(Ada 002) と、Geminiなどの Chat Model を組み合わせる方法です。
前者は、ユーザーの質問と社内ドキュメントをベクトルで照合し、意味的に近い情報を高速に探す役割。
後者は、検索結果をもとに自然な日本語で返答を構築する役割です。

FAQのようでFAQじゃない

「履歴書はPDFで送ってもいいですか?」と聞かれたら、
AIは「応募フォームにPDFを添付いただければ問題ありません」と返す。
このように、ただの静的なFAQではなく、質問内容に即した柔軟な回答ができるかが大きな差になります。

実際のやり取り画面(例)

以下は、実際に稼働している採用チャットボットの画面です。
応募者が「履歴書はPDFで送ってもいいですか?」と尋ねたところ、AIが即座に適切な案内を返しています。

このように、ユーザーが知りたいことにすぐ答えてくれる応答があると、問い合わせストレスの軽減につながります。
同時に、採用担当者側の対応業務も減るというメリットもあります。

なぜ大手のチャットは“惜しい”のか

実際に他社のチャットボットも試してみましたが、「○○のページをご覧ください」というリンク返しが非常に多く感じられました。
そしてそのリンク先が複雑で、目的の情報にたどり着くまでに何クリックも必要な構造も珍しくありません。
つまり、「調べる」ための手段が、かえってユーザーに負担をかけているのです。

AIが“検索代行”では意味がない

せっかくチャットというUIを使っているのに、実質やっていることは「ページの案内係」。
それならGoogleで検索した方が早い、という声も当然出てくるでしょう。
本来AIチャットは、“人に尋ねた時のような即答性と安心感”を提供すべきです。

軽快さと正確さを両立するために

私が構築したチャットでは、最小限のトークンで最短の答えを生成することを目指しました。
そのためには、Embeddingモデルによる意味ベースの検索が欠かせません。
「どの質問にもChatGPTを使えばよい」わけではないという判断が、ここで活きてきます。

真に求められるのは“人間的な体験”

「答えが自然」「文脈を理解している」「こちらの意図を汲み取ってくれる」。
ユーザーは、正解をくれるAIよりも、気持ちよく会話できるAIに信頼を寄せるのだと思います。
私が目指す採用チャットも、単なる情報検索ではなく、「人に聞いて良かった」と思える体験を提供したいと考えています。